伏せ込みという聞きなれない言葉を聞いて何のことかと思われていることと思いますが、これはダイヤのセッティング法のことを指しています。
ダイヤリングの一般的な留め方は、爪留め、フクリン留めがあります。
爪留めはダイヤを爪で留める技法で、6本爪が一番オーソドックスですが、ほかに4本爪のものもあります。
そしてフクリン留めとは、ダイヤの周囲を覆うように地金で固めた留め方です。
これら二つの留め方にはそれぞれ一長一短あり、たとえば爪留めは衣服などの繊維に爪が引っ掛かるという欠点があるため、普段使いにはあまり向かないとされてきました。
そしてフクリン留めは爪がないため引っ掛かりの心配はないのですが、ダイヤの周囲が地金で覆われているためダイヤの輝きが激減するという欠点がありました。
これら二つの欠点を補う形でできたのが伏せ込み方式のダイヤセッティング法です。
伏せ込みのダイヤリングには爪がなく、ダイヤがアームの部分に埋め込まれたような恰好で留められており、そのため引っ掛かりの心配はありません。
またダイヤの周囲はアームの部分を除いて露出した状態にあるため光を取り込みやすく、それゆえダイヤの輝きも激減するということはありません。
このように、爪留め、フクリン留めの欠点をなくしたダイヤセッティング法が伏せ込みという方法です。
このページでは、その伏せ込みダイヤリングの選び方を解説させて頂きたいと思います。
ダイヤの輝きはダイヤの露出度に比例する
言うまでもなく、ダイヤは光の反射によって輝きます。
ダイヤに光が入射し、その入射した光がダイヤ内で反射され、再びダイヤ外へ放射される。
これがダイヤの輝く原理です。
つまりダイヤが輝くためには、光が入射しやすい環境にダイヤをおかなければなりません。
つまりダイヤの輝きは、ダイヤの露出度に比例するということです。
では伏せ込みのダイヤリングはどうでしょう。
伏せ込みのダイヤは、ダイヤ前面はもちろん側面に至るまで露出していますから、露出度は爪留め、フクリン留めよりはるかに高いといえます。
つまりダイヤセッティングの中では一番露出の高いセッティング法で、もっともダイヤが輝く環境にあるといえます。
ただし、いくら露出度が高いセッティング法であっても、すべてのダイヤが輝くというわけではありません。
ダイヤには良し悪しがあり、上品質のものと低品質のものとではやはり輝きが違います。
次に、ダイヤリングを選ぶ際に重要なダイヤの質について述べてみたいと思います。
ダイヤが輝く条件とは
上品質なダイヤと低品質のダイヤ。
ダイヤにはピンからキリまであり、上を見たらキリがありませんが、しかし望む最低条件といえばダイヤが輝くということ。
ダイヤは輝きが命です。
輝いてこそダイヤと言えます。
そこでダイヤが輝く条件についてお話しさせて頂きます。
ご存知のようにダイヤにはその価値を測る4C評価なるものがあります。
4Cとは、カラット(重量)、カラー(色)、クラリティ(透明度)、カット(研磨・プロポーション)の頭文字をとってそう呼びます。
この中のクラリティとカットが、ダイヤが輝くうえで重要な要素となります。
ダイヤの輝く原理を知って頂くために、まずはクラリティとカットについて詳しく説明させて頂きます。
クラリティについて
クラリティとはダイヤの透明度を表す指標です。
ダイヤは天然鉱物ゆえ、必ずインクルージョン(内包物)が存在します。
このインクルージョンが多いダイヤは透明度が低くなり光の透過率が劣るわけですが、このインクルージョンの多い少ないのグレードを表したのがクラリティなのです。
クラリティは11段階にランク付けされます。
インクルージョンの全くないFL(フローレス)を最高とし、インクルージョンの量が増えるにしたがい、IF、VVS1、VVS2、VS1というふうにランク付けされるわけです。
では光の透過率の高いダイヤのクラリティはどのランク以上かというと、「SIクラス」以上のダイヤなら光をよく透過させます。
SIクラスというのは表でもおわかりのように、肉眼で発見が困難なほどインクルージョンが微小なため、光の透過にそれほど影響を与えることはありません。
しかしその下の「Iクラス」になると、肉眼での発見が容易なほどインクルージョンが大きいため、光の透過を邪魔してしまうのです。
言葉だけの説明ではわかりにくいと思いますので、実際に比較画像を見てみましょう。
左がSIクラス、右がIクラスのダイヤです。
明らかに透明度が違うでしょう。
このように、クラリティがSIクラス以上のものが透明度が高いダイヤといえます。
ただし、透明度の高さだけではダイヤの輝きは保証されません。
ダイヤの輝きはこの透明度のほかに、次に説明するカットが重要になります。
カットについて
採掘されたダイヤの原石は、一見スリガラスのようです。
それが人間の手によってあのような素晴らしい輝きを放つ石になるのです。
そしてその方法が、ラウンドブリリアントカットというカット法です。
しかしラウンドブリリアントカットすれば何でも輝くというものではありません。
カットの良し悪しによって輝いたりそうでなかったりするのです。
Excellentカットされたダイヤに光が入射すると、光はダイヤ内で漏れることなく反射され、再びダイヤ外へ放射されます。これを全反射といいます。(下イラスト左参照)
しかしダイヤのカットが深すぎたり浅すぎたりすると、光は全反射せずダイヤ底部より漏れてしまい輝きが劣ることになるのです。
これがカットの良し悪しによる輝きの違いです。
ダイヤ内の光が全反射するためには、その理想となるプロポーションが存在し、それが以下の比率で構成されています。
ダイヤは、この構成比率に近くて研磨状態が良好なものから、Excellent、VeryGood、Good、Fair、Poorとランク付けされます。
ではダイヤが輝くためにはカットはどのランク以上のものがいいかというと、「Good」以上のダイヤなら輝くといえます。
FairやPoorカットのダイヤはプロポーションに問題があり、輝くとは言えません。
よってダイヤが輝くためには、カットがGood以上必要なのです。
ダイヤが美しくあるために
ダイヤの輝きについては以上の説明でご理解いただいたでしょう。
しかし輝きだけでなく、ダイヤの美しさにもこだわりたいのならカラーにも目を向けねばなりません。
以下に、ダイヤのカラーの役割について詳しく説明させて頂きました。
参考にご覧ください。
カラーについて
カラーはダイヤの色を表す指標で、無色のダイヤほど高くランク付けされます。
最近では、Very Light Yellowとかブラウンダイヤなどが販売されていますが、要は色のついたダイヤのことであり、価値的に見れば無色のダイヤより劣っていることになります。
ダイヤはやはり無色の方が美しく、その理由はダイヤ内で起こるプリズム効果にあります。
プリズム効果を発揮する無色のダイヤ
太陽光を含む白色光はプリズムを通せば赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と七色に分かれます。
これは色それぞれの波長が異なるため、屈折によって光が分散されるためです。
この現象がダイヤ内でも起こります。
ダイヤ内に光が入射すると、光の中にある波長の異なる色が屈折によって分散されます。
上質のダイヤモンドを覗き込むと、いろいろな色の光線が発見できます。
これはダイヤ内でプリズム効果がなされているからです。
無色のダイヤに光が入射すると、反射した光は変色されることなくありのままの光線を放ちます。
しかし色のついたダイヤモンドの場合、ダイヤのカラーの影響を受けてしまい、光線を変色させるのです。
これがダイヤの美しさに影響します。
ダイヤに美しさを求めるなら無色の方が望ましく、色のついたものは避けた方が無難です。
ではダイヤが美しく輝くためには、カラーがどのランクのものがいいかというと「H」以上のものが望ましいといえます。
同じ「ほとんど無色」に属しているG、H、I、Jですが、IとJはその下の「わずかな黄色」のランクに近いこともあり、やはり幾分黄色く見えます。
プリズム効果にさほどの影響を与えないのは「Hカラー」以上のダイヤといえ、美しいダイヤを求めるならこれ以上のものを選ぶ必要があります。
伏せ込みダイヤリングの選び方
以上、クラリティ、カット、カラーの説明でおわかり頂けたと思いますが、ダイヤリングを選ぶ際重要なのは、クラリティSIクラス以上、カットGood以上、カラーH以上のダイヤ品質が絶対条件です。
これ未満のダイヤでは、輝くとも、美しいともいえません。
よってこれらをクリアしたダイヤリングにしなければなりません。
以下に、これらの条件をクリアした伏せ込みダイヤリングを紹介し、このページを閉じたいと思います。
最後までお読み頂き、真に有難うございました。