シンセティック宝石とクレサンベールとの違い

シンセティック宝石というのをご存知ですか。

シンセティック宝石とは合成宝石のことを言います。

この合成宝石とは、天然宝石と同じ化学組成・結晶構造をもち、化学的・物理的・光学的に天然石と同じものをいいます。

この定義から言うと、京セラが出すクレサンベールも合成宝石に当たります。

しかし私がみたクレサンベールの宝石には、巷に出回っているシンセティック宝石とは決定的に違っているところがありました。

このページでは、シンセティック宝石とクレサンベールの違いについて述べてみたいと思います。

曖昧表示のシンセティック宝石

ネットで見ておりますと、シンセティックルビーやシンセティックサファイアなど数多くの合成宝石と称するものが販売されています。

その商品説明のなかに合成宝石についてこう述べられていました。

天然と同じ成分を使い、自然が作り出したと同じような条件下で人工的に合成した宝石を合成宝石と言いますと。

しかし記述に関してはこれだけにとどまり、肝心の合成宝石の成分に関しての記述は見当たりませんでした。

またひどいのになると、シンセティックルビー、あるいはサファイアとだけ謳い、シンセティックの意味、合成宝石の定義さえも記述されていないものもありました。

これはひどいですね。

シンセティック宝石とは合成宝石で、その合成宝石とは天然と同じ成分を有した人工宝石のことで、その成分はこれこれです、というような記述があってしかるべきもの。

しかし成分記述がないばかりか、シンセティック宝石に関する説明も全くない有様。

これでは信用できないというのが私の感想です。

合成宝石と名乗る以上、きっちりとした商品説明があってこそお客様は信用するというものです。

しかしこの記述では、曖昧にしてごまかしているのではないかと勘繰りたくもなります。

シンセティック宝石=合成宝石。

このカテゴリーにクレサンベールを入れるのは、京セラが気の毒に思えます。

クレサンベールはすべての宝石の成分を開示

クレサンベールとは、京セラ独自の技法で作られた再結晶宝石のことです。

そして京セラはクレサンベールについてこう述べています。

クレサンベールと天然の宝石は、化学的・物理的・光学的性質にほとんど違いがないと。

つまりカテゴリー的にはクレサンベールはシンセティック宝石に当たるわけですが、しかし他のシンセティック宝石との決定的な違いはその内容の公開にあります。

以下は、京セラが公開したクレサンベールルビーに関する科学的データです。

化学的性質は同じ

天然ルビーの化学的組成は、Al2O3です。

一方クレサンベールのルビーの化学的組成もAl2O3です。

これは全く同成分ということになります。

これを証拠づけるものとしてX線回折、分光分析を行っており、天然石と同一という結果が出ております。

物理的性質も同じ

天然ルビーの結晶系は六方晶系ですが、クレサンベールのルビーも全く同じです。

そして硬度(モース)も同じ9、比重は天然3.90~4.01に対してクレサンベールルビーは4.01でほぼ同じ、融点に関しても同じ2050℃という結果が出ています。

このように物理的性質もほぼ同じといえます。

光学的性質も同じ

さらに光学的性質について見てみますと、

天然ルビーの屈折率は1.760~1.768に対し、クレサンベールのルビーの屈折率は1.762~1.770という結果が出ています。

つまり屈折率もほぼ同じ。

そして複屈折は天然は0.008に対しクレサンベールでは0.008という結果。
これも同じです。

以上のデータは、すべて京セラクレサンベールの公式ホームページより抜粋したものです。

詳しくは、京セラクレサンベールの公式ホームページをご覧ください。

このようにクレサンベールの人工宝石は、天然宝石と化学的・物理的・光学的にほぼ同じということを科学的データを以て開示しており、他のシンセティック宝石とは一線を画す宝石といえるのです。

製造工程を開示していないシンセティック宝石

合成宝石(人工宝石)という以上、その製造工程がどのようになされているのか、買う方としては気になるものです。

天然と同じ成分、同じ化学組成、同じ結晶構造を有しているのなら、それをどのようにして製造したのか。

そして最終的にどのように商品化されたのか、気になります。

しかしシンセティック宝石は、製造工程を明らかにしないばかりかそれを製造している製造元も不明確という有様です。

だれがどのような方法でその宝石を製造したのか、全く不明瞭のまま販売されている。

これがシンセティック宝石の現状といえます。

製造工程開示のクレサンベール

京セラは公式ホームページの中で、クレサンベールの製造工程について開示しています。

京セラはクレサンベールの製造工程において、再結晶宝石をより美しく仕上げるために様々な努力をしています。

それは原鉱石の精製に始まり、出来上がった再結晶宝石の厳選、商品化といった厳しい審査を経て、はじめてクレサンベールと認定されるのです。

以下にその工程を説明します。

不純物の除去

まず原鉱石の中で良質なものが使用できるよう、鉱石を厳選していきます。

そして適した原石が見つかったらそれを粉状にして精製していきます。

つまりこの段階で不純物を出来るだけ取り除くのです。

こうすることで黒ずみやインクルージョンの発生を抑え、良質な再結晶が生まれやすくしています。

原鉱石を溶かす

次にプラチナ製のるつぼの中で原鉱石を溶かしていきます。

地球内部のマグマと同じ状態を再現するために1410℃以上で加熱し、どろどろに溶かしていきます。

そして結晶が順調に成長するよう理想的な環境を作るために、人とコンピューター制御によって管理していきます。

しかし京セラはこう述べています。

科学技術はあくまで環境を整えるサポート役にすぎません。

結晶が美しく成長してゆく過程は、石そのものに委ねるしかないと。

こうして出来上がったのが再結晶宝石になるのですが、ここからさらに厳選が始まります。

厳選・カッティング

次に、再結晶によって生まれた原石のチェックが始まります。

色合い、インクルージョンの大きさ、位置等を確認し、良質な天然宝石に匹敵するほどの宝石になるようカッティングする部分をマーキングし、カットしていきます。

カットは良質な色合いの部分のみを選び、インクルージョンを避けながら行われます。

そして途中何度も品質のチェックが行われ、宝石ひとつひとつを熟練した職人による丹念な手作業で磨き上げられます。

しかしここで完成ではなく、さらに厳しい品質検査が待っています。

品質検査

研磨された再結晶宝石を、さらに熟練の鑑定士によって品質検査を行います。

GIAに準拠した判断基準をもとに、確かなグレーディングが行われます。

そして最終的に宝飾品として製品化されるのは、育成された再結晶宝石の中でたった数パーセントだと言います。

つまりクレサンベールは、これほどの行程を経てようやく世に出ることになるのです。

まとめ

以上をお読みになって、シンセティック宝石とクレサンベールの違いがはっきり判られたと思います。

クレサンベールをシンセティック宝石と一括りにしてしまうには、いささか無理があります。

クレサンベールはシンセティック宝石というカテゴリーには属さず、敢えて言うなら京セラが謳う「再結晶宝石」というカテゴリーがピッタリの宝石といえるでしょう。

最後にクレサンベールのルビーネックレスを紹介しこのページを閉じたいと思います。

最後までお読み頂き、真に有難うございました。

クレサンベール ルビーネックレス

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