シンセティック宝石=合成宝石。
ちなみに合成宝石とは、高度な技術を用いて人工的に作られた宝石のことで、天然宝石と同じ化学組成、同じ結晶構造をもつと、定義付けられています。
つまりシンセティックのルビーやサファイア、エメラルド等の中身は天然ものと全く同じで、違いといえば天然で創造されたものか人工で製造されたものかだけの違いということです。
そして天然に比べ値段が安いのは、希少性の高い天然に比べ大量に生産できるからだといいます。
もっともらしい文言ですが、私はいささか疑問が残ります。
そんなに簡単に合成宝石ができるものかと。
天然宝石と同じ成分、同じ化学組成、同じ結晶構造をもつ合成宝石を作るとなると、高度な技術はもちろんのこと、膨大な時間と手間が必要になります。
それが大量生産できるからといって、そんなに安く販売できるものかと。
合成宝石は人工宝石です。
天然に比べ安いのはわかります。
しかし合成宝石と謳う以上、それを証明するものが必要なのではないかと思います。
このページでは、シンセティック(合成)宝石に関して、お客様が買うにあたって求める必要な情報について述べさせて頂きます。
製造元はどこ?
シンセティック宝石を販売している商品ページをみて思うのは、その製造元が明らかにされていないことです。
ここでいう製造元とは、リングやネックレスの部材の製造元ではなく合成宝石の製造元です。
誰がその合成宝石を作ったのか?
合成宝石は天然宝石と成分、化学組成、結晶構造が同じだと、いくらまことしやかに述べられていても、それがわからないと信用できません。
まず製造元を明らかにしてもらいたいものです。
どのような製造工程で作られたのか?
商品説明で、この合成宝石は高度な技術を用いて作られたと述べられています。
しかしどのような製造過程を経て作られたのか?
それに関する記述は商品説明では触れられていません。
冒頭で申し上げたように、同じ成分、同じ化学組成、同じ結晶構造の合成宝石を作るには、高性能の機器と大変な手間と時間を必要とするはずです。
しかしそれら工程の記述は一切なく、ただ高度な技術と謳っているだけ。
これでは信用できません。
その製造工程を知って、はじめて信用できるといえるんじゃないでしょうか。
製造工程も是非明らかにしてもらいたいものです。
鑑別書の添付
合成宝石は、同じ成分、同じ化学組成、同じ結晶構造と謳っています。
しかしそれは文言だけで、実際の証明書はありません。
たとえば天然ルビーなら化学的組成は、Al2O3です。
ならば合成ルビーもこれと同じでなくてはいけません。
では同じと言える根拠は?
それを調べた研究機関は?
などなど疑問がいっぱいです。
言うは易しです。
商品説明で、成分等みな同じと言うことは簡単に言えますが、それを証明するものがなければ信用できません。
合成宝石でも、鑑別書の添付が必要なのではないでしょうか。
まとめ
シンセティック宝石、いわゆる合成宝石に関しても厳格でなければならないというのが私の意見です。
合成宝石が定義通りの宝石であるならば、それに見合う証明書なるものが必要なはず。
もしそれがないのであれば、合成宝石ではなくイミテーション、いわゆる模造宝石と謳った方がお客様のためといえます。
合成宝石を作るのはそんなに簡単なものじゃないというのは、京セラが出すクレサンベールを見ればわかります。
クレサンベールは再結晶宝石という名で販売されていますが、成分・化学組成・結晶構造が天然と同じと言う合成宝石のカテゴリーに属します。
しかしネットで販売されているシンセティック宝石とは一線を画す合成宝石といえます。
最後に、合成宝石を作るのはどれだけ大変かを知って頂くために、クレサンベールの詳細について述べさせて頂き、このページを閉じたいと思います。
クレサンベールとは
クレサンベールとは、京セラ独自の技法で作られた再結晶宝石のことです。
京セラはクレサンベールについてこう述べています。
クレサンベールと天然の宝石は、化学的・物理的・光学的性質にほとんど違いがないと。
これを裏付ける証拠として、京セラは科学的データを公表しています。
化学的性質は同じ
天然ルビーの化学的組成は、Al2O3です。
一方クレサンベールのルビーの化学的組成もAl2O3です。
これは全く同成分ということになります。
これを証拠づけるものとしてX線回折、分光分析を行っており、天然石と同一という結果が出ております。
物理的性質も同じ
天然ルビーの結晶系は六方晶系ですが、クレサンベールのルビーも全く同じです。
そして硬度(モース)も同じ9、比重は天然3.90~4.01に対してクレサンベールルビーは4.01でほぼ同じ、融点に関しても同じ2050℃という結果が出ています。
このように物理的性質もほぼ同じといえます。
光学的性質も同じ
さらに光学的性質について見てみますと、
天然ルビーの屈折率は1.760~1.768に対し、クレサンベールのルビーの屈折率は1.762~1.770という結果が出ています。
つまり屈折率もほぼ同じ。
そして複屈折は天然は0.008に対しクレサンベールでは0.008という結果。
これも同じです。
以上のデータは、すべて京セラクレサンベールの公式ホームページより抜粋したものです。
詳しくは、京セラクレサンベールの公式ホームページをご覧ください。
このようにクレサンベールの人工宝石は、天然宝石と化学的・物理的・光学的にほぼ同じということで、見た目だけ同じという人工宝石とは一線を画す宝石といえるのです。
ではこのクレサンベールを選ぶメリットとは何でしょう。
それにはクレサンベールができるまでの製造工程を知る必要があります。
クレサンベールのできるまで
京セラはクレサンベールの製造工程において、再結晶宝石をより美しく仕上げるために様々な努力をしています。
それは原鉱石の精製に始まり、出来上がった再結晶宝石の厳選、商品化といった厳しい審査を経て、はじめてクレサンベールと認定されるということです。
以下にその工程を説明します。
不純物の除去
まず原鉱石の中で良質なものが使用できるよう、鉱石を厳選していきます。
そして適した原石が見つかったらそれを粉状にして精製していきます。
つまりこの段階で不純物を出来るだけ取り除くのです。
こうすることで黒ずみやインクルージョンの発生を抑え、良質な再結晶が生まれやすくしています。
原鉱石を溶かす
次にプラチナ製のるつぼの中で原鉱石を溶かしていきます。
地球内部のマグマと同じ状態を再現するために1410℃以上で加熱し、どろどろに溶かしていきます。
そして結晶が順調に成長するよう理想的な環境を作るために、人とコンピューター制御によって管理していきます。
しかし京セラはこう述べています。
科学技術はあくまで環境を整えるサポート役にすぎません。
結晶が美しく成長してゆく過程は、石そのものに委ねるしかないと。
こうして出来上がったのが再結晶宝石になるのですが、ここからさらに厳選が始まります。
厳選・カッティング
次に、再結晶によって生まれた原石のチェックが始まります。
色合い、インクルージョンの大きさ、位置等を確認し、良質な天然宝石に匹敵するほどの宝石になるようカッティングする部分をマーキングし、カットしていきます。
カットは良質な色合いの部分のみを選び、インクルージョンを避けながら行われます。
そして途中何度も品質のチェックが行われ、宝石ひとつひとつを熟練した職人による丹念な手作業で磨き上げられます。
しかしここで完成ではなく、さらに厳しい品質検査が待っています。
品質検査
研磨された再結晶宝石を、さらに熟練の鑑定士によって品質検査を行います。
GIAに準拠した判断基準をもとに、確かなグレーディングが行われます。
そして最終的に宝飾品として製品化されるのは、育成された再結晶宝石の中でたった数パーセントだと言います。
つまりクレサンベールは、これほどの行程を経てようやく世に出ることになるのです。
完成された再結晶宝石
天然では成しえることができない美しさをもった宝石。
それがクレサンベールの再結晶宝石です。
人工的になされたものは、宝石が結晶化するための環境作りだけ。
それ以外の結晶化はすべて宝石まかせ。
マーキング、カッティングは天然宝石においても行われていること。
しかしそれでも色むら、インクルージョンが混入するため、加熱処理などの人工処理が行われています。
しかしクレサンベールにはそのような人工処理は必要ありません。
科学の力で色むら、インクルージョンを出来るだけ少なくし、さらにその少ない中から厳選し、抽出した宝石だから人工処理せずとも美しいのです。