私の母は、要介護5で、現在特養に入所しています。
私の母への介護は、平成22年に父が他界してから始まったのですが、当初母の認知症はそれほどではなく、介護認定も要介護2でした。
介護サービスに関してはデイサービスを利用し、週に数回通っておりました。
その時入浴と同時に洗髪もして頂きましたので、自宅で入浴することはありませんでした。
なんせ私が男ですから、母は私に風呂を入れてもらうことを嫌い、自宅での入浴を拒否したのです。
ですから母の入浴に関しては、デイサービスに任せっぱなしでした。
認知症が進む
ところが、母の入浴をすべてデイサービスに任せるわけにはいかない事態になりました。
それは母の認知症が進み、おねしょをするようになったからです。
私はさっそく介護用の紙おむつを購入し、それをはいて寝てもらいました。
朝起きた時、それをはき替えてデイサービスに行くのですが、帰ってきたとき、母は「おしっこ臭い」といわれたといって涙ぐんでいました。
これはかわいそうだと思い、翌朝よりシャワーを浴びてからデイサービスに行かせるようにしたのです。
しかしこれがまたひと悶着ありました。
私が男ですから、息子に裸を見られるのを嫌い、シャワーを拒否したのです。
妻にお願いしようかと思いましたが、妻は妻で朝は忙しく、障害を持った息子の世話で手一杯だったのです。
それに自宅から実家までは距離があり、朝の通勤ラッシュにも巻き込まれますから車で20分ほどかかります。
それゆえ、私一人でしなければならず、無理やり母を裸にし、全身をシャワーで洗い流し、デイサービスに送り出しました。
まあ、この時の母の私に対する罵声はひどいものでした。
「何すんのん!出ていけ!」「おまえなんか嫌いや!」
しかし「おしっこ臭い」と母が言われるよりましです。
これ以降、私は母の入浴、シャワーを毎朝行ったのです。
シャワーに意外な効果!
母が嫌がる私のシャワー介護ですが、意外に別の効果があったのです。
はじめは嫌がっていた朝のシャワーも、私に裸を見られることに徐々に慣れてきて、終いにはそれが当たり前のようになり自然と私からシャワー介護を受けるようになりました。
全身を石鹸で洗ってやり、最後にシャワーで流すのですが、それが気持ちいいのかシャワーが終わって体を拭いてあげると、「ありがとう、ありがとう」と礼を言ってくれるようになったのです。
またデイサービスの送迎者が迎えにくると、ニコッと笑って車に乗り込むようになりました。
確かにシャワーは気持ちのいいものです。
シャワーを首、肩、胸、お腹、背中、腰、脚と順番に浴びていくと、ツボを刺激されるのか気持ちよくなってきます。
認知症の母も同じように感じたのでしょうか。
表情も豊かになり笑顔が出るようになりました。
体も清潔になり、それが気分となって表情に現れる。
シャワー以後の母はいつも晴れやかな表情を見せていました。
シャワーには認知症の方を善導する 意外な力があるのかもしれません。
まさしく、怪我の功名とでもいうべきものでしょう。