深紅の宝石ルビー。
その色味と輝きは妖艶さを醸し出し、見る者の感情を大いに刺激する魅惑の宝石。
深みのある赤色のルビーは魅力に溢れ、女性なら一度は身に着けたいと思うもの。
昨今、ファッションリングを始めあらゆるところにルビーを用いた指輪が出回っておりますが、値段の高低に驚いてしまいます。
カラット数が小さいのに高いルビー。
その一方でカラット数が大きいのに安いルビー。
この差は一体何なのか?
一般にルビーはカラット数の大きさだけで値段が決まるわけではありません。
ルビーに大事なのはまず色合い。
どのような色を帯びているかで価値が測られます。
次に透明度。
コランダムという鉱石から産出されるルビーは一般にクラックやインクルージョンが多く、透明度が極めて悪い。
それゆえ濁りのない透き通ったルビーが重宝され価値は高いとされます。
そして次に大事なのがカット。
どのようなファセットカットにするかで、ルビーの色味、透明性が変わってきます。
そして最後に重要なのがカラット。
ルビーの大きさが価値を測る最後の要素となります。
このようにルビーは、一概に大きさだけでその価値を測ることはないのですが、あまりに安いと疑問に思ってしまうのも無理からぬこと。
なぜそんなに安いのかと。
このページでは、巷に出回っている安いルビーの指輪に焦点をあて、なぜこんなに安いのか見てみたいと思います。
ルビーの95%は加熱処理されている
知っていましたか?
世に出回っているルビーの95%は加熱処理されていることを。
コランダムから産出されるルビーは、すべて美しいわけではありません。
むしろ黒ずんでいたり褐色がかっているものが多く、そのままでは市場に出すことはできません。
そこで取られたのがこの加熱処理で、こうすることによって黒ずんでいたルビーの色が変わり、商品として扱えるようになったわけです。
しかし加熱処理されたルビーは天然とは言えないんじゃないの?
いえいえ国内においては加熱処理されたルビーは天然扱いされ、立派に天然ルビーとして販売されています。
この加熱処理はいわば致し方ないことで、もしこれがなければ市場に出回るルビーはほとんどなくなり、市場として成立しなかったでしょう。
加熱処理が認められたのは、いわば市場のためといえるかもしれません。
ただ、この加熱処理したルビーは非加熱ルビーと比べ格段に安いわけではなく、ここでいうルビーの安さの理由ではありません。
安さの理由となるルビーの人工処理
加熱処理はルビーの通常処理として行われており、天然宝石として認められていることに加えて経年による色の劣化などがないことから価格も安定しています。
しかし次に述べる人工処理は、粗悪なルビーをきれいなルビーに蘇らせるために行われる処理法で、ルビーの通常処理から逸脱し、安いルビーの原因となっています。
表面拡散加熱処理
宝石の色を変えたり色調を変えるために、加熱処理時に人為的に特定の元素を加え、宝石の表面に拡散・浸透させる加熱処理法を表面拡散加熱処理といいます。
たとえば無色のコランダム(ルビーやサファイア)にチタンやクロムといった着色元素を加熱処理時に加えると、色を石表面に浸透させることができます。
たとえばルビーなら、見た目は赤でもそれは表面だけで、カットすれば中身は無色のコランダムが現れてきます。
こうなるともはやルビーとは言えず、天然宝石ともいえないでしょう。
しかしこんなルビー商品が実際に販売されているのです。
ルビーにこういった処理をした場合、商品説明の中での記載が義務付けられており、もし表面拡散処理と記載があれば選ばないようにしなくてはいけません。
いくらきれいな赤色でもそれは表面だけで、中身は無色という場合もありますから。
大抵このような商品は、カラット数のわりに極端に安い価格が付けられていますからすぐにわかるはずです。
含侵処理
ルビーの透明度をよくする目的で行われているのがこの含侵処理。
鉛ガラスをルビーのクラックやインクルージョンに含侵させ、透明度をアップさせるという処理。
しかしこの含侵処理されたルビーは、重量や耐久性などに影響を及ぼすことが懸念されており、事実酸に弱いという報告も見られます。
つまり経年による退色や、汗による変色もあり得るのです。
この含侵処理されたルビーは、鑑別書においては「含侵を認む。」と表記されるため見分けるのは容易いですが、商品説明では省いているときもあるため、十分な注意が必要です。
このルビーに関しても、カラット数のわりに価格が安いというのが特徴で、あまり安いルビーリングの場合、商品説明や添付されている鑑別書の中身をよく見る必要があります。
まとめ
以上、安いルビーリングには理由があるについて述べさせて頂きました。
選んでいいのは加熱処理だけで、そのほかの表面拡散加熱処理や含侵処理されたルビーは絶対選んではいけません。
価格が安いからといって買うと、あとで必ず後悔することになります。