緑濃き深海を思わせるほどの美しさをもつ魅力の宝石、エメラルド。
こんな色の石が、自然の中から生み出されたものとはにわかに信じられない。
静かで上品な佇まいは見る者の心を和ませ、身につけているだけで何やら落ち着いた気分にしてくれそう。
エメラルドとはそんな宝石です。
しかしエメラルドほど選ぶのに難しい宝石はありません。
インクルージョン(内包物)のないエメラルドは存在しないというぐらいエメラルドには内包物が付き物で、そのため透明度には石によってムラがあり、またクラック(亀裂)の走り方によっては割れることもあるため選ぶのに慎重に期す必要があるのです。
そんなエメラルドを普段使いの指輪にするとなると、どういったことに注意を払わなければならないのでしょう。
このページでは、エメラルドの指輪を普段使いにする場合の選び方を解説したいと思います。
普段使いにするリングの条件
普段使い、いわゆる日常ずっと身につけている指輪というのは、耐久性に優れたものでなくてはなりません。
石のない指輪の場合だったら地金だけに気を遣えば済むことですが、ストーン付の指輪の場合はストーンにも目を向けなければなりません。
日常生活においては料理もするでしょうし、食器洗い等の水仕事もするでしょう。
そんな中において、普段常に身に着けるリングとなるとよほどの耐久性をもったストーンでなければなりません。
果たしてエメラルドにそれほどの耐久性はあるのかどうか、疑問に感じるところです。
天然エメラルドにおける耐久性
天然エメラルドのモース硬度は、7.5~8.0です。
これは歯のモース硬度7より少し高い硬さです。
しかしモース硬度とは表面の硬さのことで、靭性とは異なります。
靭性とは粘り強さのことで、割れに対する耐性のことを指します。
耐久性をみるにはこの靭性を見なければなりません。
一番靭性の高い鉱物はコランダム(ルビーやサファイア)とヒスイの8で、一番モース硬度が高いとされるダイヤモンドでも靭性は7.5です。
エメラルドとなると靭性は5~5.5で、決して耐久性があるとは言えません。
ましてクラックやインクルージョンの多いエメラルドとなると耐久性はこれ以下と推察され、非常にもろい宝石と言わざるを得ません。
天然エメラルドの褪色性
褪色とは色があせることです。
天然エメラルドのグリーンは、ずっと色が変わらないと思っているでしょうがそうではありません。
天然エメラルドのほとんどはオイル処理が施されており、これはエメラルド内にあるクラックやインクルージョンを目立たなくするための処置で、通例になっています。
そんなオイル処理をされたエメラルドを、食器洗いなどの水仕事で水に浸す機会が多くなればどうなるでしょう。
オイルは抜け落ち、クラックやインクルージョンが浮き出されてくるのです。
そうなるとエメラルドは白濁化し、きれいなエメラルドグリーンも褪色していくことになるのです。
これは私の経験した実例からも言えることです。
私が宝石商の頃、お客様の中でエメラルドのリングを買ってもらった方がいたのですが、その方は愛用するあまりお風呂につけて入っていたのです。
ある日そのお客様から相談を受け、エメラルドの色があせていると言われました。
事情を聴いて褪色している原因はお風呂にあることを説明し、それ以降はお風呂には決してつけてはいらないようご注意させて頂いたのですが、こうなってしまってはどうしようもありません。
エメラルドのグリーンは永遠に変わることがないというのは幻想で、オイル処理をされたエメラルドは必ずといっていいほど時間が経過すればオイルが抜け落ち褪色していくのです。
普段使いのエメラルドリングの条件
普段使いのリングには耐久性が必要と申し上げました。
そうなるとエメラルドリングの場合、エメラルド自体に耐久性が求められます。
そのためには何が必要でしょうか?
割れる原因になるエメラルド内のクラックやインクルージョンが存在しないこと。
そして褪色の原因になるオイル処理が施されていないこと。
これら二つが揃ってはじめて普段使いに相応しいエメラルドリングということになります。
しかしそんな理想的なエメラルドリングがあるのでしょうか?
はっきり申し上げましてありません。
冒頭で申し上げましたように、インクルージョンのないエメラルドは存在しないし、オイル処理を施されていないエメラルドはほとんど皆無です。
では普段使いにできるエメラルドリングはないのか?
残念ながら天然のエメラルドではありません。
しかし人工的に再結晶されたエメラルドならそれが可能です。
それは京セラが開発したクレサンベールの再結晶エメラルドで、それをリングにしたものなら普段使いに用いることができます。
ではそのクレサンベールの再結晶エメラルドにはどういった特性があるのか。
それを以下に述べます。
クレサンベール再結晶エメラルドの特性
クラック、インクルージョンがほとんどない
クレサンベールは京セラ独自の技法で作られた再結晶宝石で、その成分は天然宝石と同一です。
自然界が長い長い時間をかけて作った宝石と同一のものを、科学の力をもって再現したものです。
自然界では様々な不純物の混入や温度の変化があるため、インクルージョンやクラックが発生しますが、クレサンベールは不純物を鉱物の時から取り除き、非常にピュア状態にある鉱石を溶かし、それをコンピューター制御によって再結晶したものですからインクルージョンやクラックがほとんど発生しません。
また発生したとしてもカッティングの際、それらを避けてカットしますので、クレサンベールとして世に出るのはほぼインクルージョンがない状態です。
エメラルドにインクルージョンは付き物というのは天然エメラルドだけにいえることで、クレサンベールのエメラルドには当てはまらないといえます。
決して色あせない
クレサンベールのエメラルドには人工処理は一切していません。
人工的に行うのは、鉱石が再結晶するための環境作りだけで、完成したクレサンベールの宝石には一切手を加えておりません。
よって巷で通例になっている天然ルビーやサファイアなどへの熱処理、天然エメラルドで施されているオイル処理は一切していないため、色あせることはないのです。
普段使いに向くクレサンベールエメラルドリング
このように、強い耐久性と褪色性の皆無を特性とするクレサンベールのエメラルドリングなら普段使いに向いているといえるでしょう。
しかしクレサンベールのエメラルドのメリットはこれだけではないのです。
京セラはクレサンベールについてこう述べています。
クレサンベールと天然の宝石は、化学的・物理的・光学的性質にほとんど違いがありませんと。
この中の光学的性質について書かれたものの中に屈折率があります。
屈折率とは、光が通過する媒体によってその速度が変わる度合いを比率化したものですが、この屈折率表示の中に天然エメラルドの屈折率が1.565~1.598に対し、クレサンベールエメラルドは1.563~1.568とあります。
確かに京セラの記述どおりほぼ同じです。
これはどういうことかというと、屈折率が同じということは輝きも同じということにつながるのです。
天然以上の輝きを放つクレサンベール宝石
ここで屈折率について少しお話しさせて頂きます。
屈折率は以下の数式で産出され、屈折率が高いものほど光は鋭角に曲がります。
屈折率は臨界角に関係し、臨界角とは光が逃げない角度のことを言います。
臨界角のことをわかりやすく水と空気とで説明すると、光源を水の中に置き、そこから光を放射したとします。
放たれた光は水中から空気へと進みますが、媒質が異なるため、空気中に出ると光は屈折します。(①の場合)
水面に対して光源はほぼ真下にあるので光はこういう方向に進みますが、これがもし光源から離れたところの水面ではどうでしょう。
②のように、光は水中から出られず、そのまま水中に反射されることになるのです。
この角度を臨界角といいます。
この臨界角は宝石の場合輝きに影響し、臨界角が狭いほど光を逃さず効率的に光を反射させることができます。
ダイヤが輝くのは臨界角が極端に小さいからで、そのおかげで入射した光を逃さずダイヤ内で反射させるため、あのような素晴らしい輝きを放つことができるのです。
話を元に戻しますと、クレサンベールの宝石は天然ものと同一の成分を有しているため、屈折率は同じです。
屈折率は同じだから臨界角も同じということになり、輝きも天然のものと同じということなのです。
しかし唯一天然ものと違うものがあるとするならば、透明度による輝きの違いです。
透明度のある宝石は光の透過がスムーズに行われるためよく輝きますが、インクルージョンがある場合それが光の透過を邪魔し、輝きを劣らせます。
先述したようにクレサンベールにはほとんどインクルージョンがないため透明度は抜群です。
このような透明度抜群のクレサンベールとインクルージョンがある天然宝石とでは輝きが全然違います。
よってクレサンベールは、天然宝石と屈折率が同じという事実に加えて透明度が高い分、より輝くということを意味しています。
まとめ
普段使いのエメラルドリングの選び方を解説しました。
普段使いにするエメラルドリングには耐久性が求められます。
しかしそんな強い耐久性と色あせないエメラルドリングを天然に求めるのは不可能です。
しかしクレサンベールならそれが可能です。
強く、色あせないクレサンベールのエメラルドリングこそ、普段使いに相応しいのではないでしょうか。
最後に、クレサンベールのエメラルドリングを紹介し、このページを閉じたいと思います。
最後までお読み頂き、真に有難うございました。