私の母は現在要介護5の認定を受け、特養に入所しています。
施設内では車椅子での移動ですが、入所するまで私は、母に車椅子を使わせませんでした。
デイサービスでもショートステイでも、スタッフに車椅子の使用をやめてもらい、できるだけ歩かせるようにしてもらいました。
その理由は・・・
使わない筋肉は退化する
ある寒い朝のこと、私は母を布団から起こそうと思い上体を持ち上げましたが、「痛い」といって起き上がるのを拒みました。
この時母はまだベッドではなく、布団で寝ていました。
おそらく朝冷えたため体の筋肉が縮み、起き上がるときに痛みを感じたのでしょう。
どこが痛いのか聞くと脚が痛いとのこと。
私は脚を10分くらいマッサージをして筋肉をほぐしました。
ようやく筋肉がほぐれ痛みはましになったものの、歩くときには少し痛みを感じるのか、いつものように歩けませんでした。
デイサービスに送り出す時間が迫っていましたので、あわてて入浴させて体を温め、服を着せて朝食を摂らせました。
送迎の車が到着し私は母を玄関までゆっくり導きましたが、今度は土間で立ち上がることができなくなりました。
それを見た送迎のスタッフは車椅子での移動を試みましたが、私はそれを拒否しました。
私は母の正面に立って母の両肘を両手で支え、ゆっくり手引き歩行し車まで誘導しました。
無事、車に乗せたあと私はスタッフの方に、施設でも車椅子は使わずにできるだけ自分の足で歩かせるようお願いしました。
なぜなら、使わない筋肉は退化するからです。
年齢とともに筋肉は退化します。伸縮力も弱くなり可動域も狭くなります。
だからこそ、筋肉は使わなければならないと思ったのです。
車椅子を使えば介護はラク
介護を必要とする高齢者の動きは極めてスローです。
それゆえ介護する側にとっては非常に時間がかかります。
デイサービスにはたくさんの高齢者がいらっしゃるから一人一人の世話をするのは大変で、動きがスローの高齢者には車椅子に乗ってもらった方が介護がスムーズにいき、時間も短縮できます。
また高齢者にとっても車椅子は非常にラクだからついつい甘えてしまい、車椅子を手放せなくなってしまいます。
そうなると高齢者の筋肉はますます退化し、終いには歩くことすら困難になってしまいます。
私はそのことを危惧したため、敢えて車椅子を使わないようデイサービスのスタッフに無理を言ったのです。
帰りの母は普通に歩いていた
ショートステイが終わり、母が送られてきました。
母はいつものように車から降り、ゆっくりと玄関に入ってきました。
その日のメニューを聞いてみると、手引き歩行のリハビリを何回も行ったということです。
そうするうちに筋肉がほぐれ、普通に歩けるようになったということ。
送迎の運転手さんは、「やっぱり歩かなあかんな。」と妙に感心していたのが印象的でした。
その運転手さんも、母まではいかなくてもそれなりの高齢者でした。
だからこそ、自分に言い聞かせるつもりで言ったのでしょう。
やはり筋肉は使わなければいけません!
高齢者にラクは厳禁
このようなことを言うと、鬼のようなことを言っているようですがそうではありません。
高齢者を大事にするあまり、何でもかんでもしてあげればかえって高齢者のためによくありません。
車椅子がそうです。
車椅子に乗れば高齢者はラクです。
人が後ろから押してくれて、自由に行き来できます。
しかし筋肉は劣っていきます。
車椅子に乗るうちそれがラクになって手放せなくなり、ついには歩くことが億劫になります。
そうなると筋肉の退化は加速し、ますます歩けなくなるのです。
歩けて幸せなのは高齢者です。
そのためには、車椅子は介護の最後の手段にとっておいた方がいいでしょう。