太陽光をあてることによって消臭効果や抗菌効果があるとされ、一時脚光を浴びた光触媒ですが、その後技術革新はあったのでしょうか。
実は、これまでの酸化チタンの光触媒には大きな欠陥がありました。
それは、太陽光の紫外線しか反応は認められず、そのため室内での効果はほとんどなしというのが判明したからです。
当初、将来的に大きな市場があるとされていた光触媒も、その後一気に盛り上がりを欠くようになり、商品化にはまだまだ技術革新が必要であると認識されたのです。
しかしここにきて、再び光触媒に脚光が浴びてきています。
その後の光触媒に、技術革新が見られたのか?
このページでは、光触媒の仕組みと、その後の技術革新への歩みについてお話を進めてみたいと思います。
光触媒の仕組み
そもそも光触媒とは何なのか?
まずはそこからお話ししたいと思います。
光触媒は植物の分野でいいますと、光合成がそれにあたります。
太陽光が植物の中の葉緑素にあたりますと二酸化炭素と水が反応し、デンプンと酸素になるという働きです。
植物の場合は葉緑素を触媒としていますが、一般に知られる光触媒は二酸化チタンを触媒としています。
この二酸化チタンに太陽光をあてることで、消臭や抗菌効果があると期待されたのです。
その仕組みは次の通りです。
二酸化チタンに太陽光(紫外線)が当たると、その表面から電子が飛び出します。
そしてその飛び出した電子は、空気中の酸素と結びつき、スーパーオキサイドアニオン(O2-)を生成します。(以下イラスト参照)
そして電子が飛び出した二酸化チタンの方は、表面はプラスの電荷を帯びていますから、元に戻ろうとします。
そのため空気中の水分(H2O)から電子を奪い取ります。
一方電子を奪い取られた方の水分(H2O)は、ヒドロキシラジカル(・OH)に変化します。(以下イラスト参照)
これら一連の電子の移動によって生成された二つの物質、スーパーオキサイドアニオン(O2-)とヒドロキシラジカル(・OH)は強力な酸化分解力を持っており、これに近づいた有機物質(におい、油分、雑菌、カビ)はこの二つの物質に分解され、水と二酸化炭素に変えられてしまいます。(以下イラスト参照)
においや雑菌の元であった有機物質は分解されますから、その作用はなくなり、消臭や抗菌という結果となって表れるのです。
これが光触媒の仕組みです。
二酸化チタンの光触媒に求められたもの
しかしこれら一連の働きは、太陽光の中でも紫外線しかその効果が表れず、室内に入る微量の紫外線や、紫外線のほとんど出ない蛍光灯では効果はなしと判断されたのです。
そこで光触媒に求められたものは、どんな光にでも反応する可視光応答型光触媒です。
可視光、いわゆる目に見える光全部に反応する光触媒。
これでないと商品化はできないと判断され、光触媒の熱は一気に冷めてしまったのです。
※ この内容に関しては、上智大学 坂間研究室においての「光触媒が抱える課題」に詳しく書かれていますので、参考にして下さい。
可視光応答型光触媒ができた!
トヨタグループのひとつである豊田中央研究所が、可視光応答型の光触媒を完成させました。
名前を「V-CAT」といい、窒素ドープ酸化チタン(TiO-N)を触媒にした光触媒で、従来の紫外線でしか反応が見られない二酸化チタンと違い、可視光(目に見える光)にも反応する画期的素材です。
可視光がV-CATにあたると、強い酸化分解力を持つヒドロキシラジカル(・OH)が発生し、近づいてきた悪臭や、汚れの元となる空気中の油分、細菌などを分解し水と二酸化炭素に変えてしまうというもの。
これによって消臭と抗菌効果がもたらされ、空気は浄化されるという仕組みです。
このV-CATの光触媒は現在様々な分野で用いられており、身近な企業でいうと大正製薬の「パブロンマスク365」がそれで、マスクにV-CATを使用することで抗菌作用を発揮し、体を細菌から守るマスクとして売り出されています。
このように、V-CATの光触媒は社会的評価が高く、あまり世に知られていないだけで、これからますますあらゆる商品に組み込まれていくものと予想されます。
V-CAT光触媒が次々商品化
現在V-CAT光触媒を利用した商品がどんどん売り出されています。
中でも繊維に付着させ、衣服に染み付いた汗やたばこの臭いを抑え、汚れや雑菌も防ぐ効果をもつ高機能繊維。
開発したのは、繊維関係メーカーなど9社で構成する「V-CATファミリー」と中部大学。
用途は徐々に広がり工場や介護施設、コンビニなどの制服にも採用されたとか。
そして2010年、中部大がウイルスを不活性化させる機能を確認し、新型インフルエンザ予防という新たな効果も!
これは中日新聞社賞に輝き、ネットでも掲載されています。
詳しくは中日新聞のホームページをご覧ください。
室内の空気を浄化するV-CAT光触媒の造花
今まで売られていた二酸化チタンの光触媒造花は蛍光灯の光には反応しないため、効果はほとんど感じられませんでした。
しかし窒素ドープ酸化チタン(TiO-N)を触媒にしたV-CAT光触媒の造花は可視光で反応するため、空気を浄化する働きに大いに期待がもてます。
現在、V-CAT光触媒という名前にそれほど知名度はありませんが、今後知られるようになると、病院や老人ホームなどにも普及するであろうと予想されます。
まとめ
当初発売された光触媒商品の効果はほとんどなく、それゆえブームは余儀なく下火になってしまいましたが、新しく開発されたV-CAT光触媒は画期的なもののようです。
大手の企業が自社の商品に組み込んで販売に乗り出していることから考えても、高い信頼性がうかがえます。
「光触媒に消臭効果はあるのか」と題して話を進めてきましたが、最近の光触媒について調べていくうちに、効果があると言わざるを得ないようになりました。
V-CAT光触媒は、今後一層伸びていくものと私は予想しています。
そして今後光触媒が、さらなる技術革新に進むことを期待いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。